昨日 トレーニング&クオリティ・マネージメント部よりプロサイトへ投稿された記事内容をご案内します。

最近PADIに寄せられるダイビング事故報告のなかで、PADIメンバーの管理下のダイビングで減圧症が発症したという事象が増えています。

この中には、ノンストップ・リミットを超えた、もしくはぎりぎりのプロフィールや、突発的に急浮上をしてしまった場合だけでなく、ノンストップ・リミットを余裕で守り、安全停止を実施した場合でもお客様に減圧症が発症してしまったケースもあります。

これらはすべてPADIメンバーのダイビング事故として扱われています。

このような状況を踏まえ、注意喚起の意味で、今回以下の情報を発信させていただきます。

事実の共有化

知っておいていただきたいこと①

不幸にしてPADIメンバーが監督していたお客様に減圧症が発症した場合、基本的に傷害としてではなく、保険では疾病として扱われます。
具体的に言いますと、管理下傷害保険のような、いわゆる傷害保険はいずれの保険も元々疾病を担保する目的の保険ではありません。
但し、発症したダイビングに「急激、外来、偶然」の要素が明らかな場合には適応される場合もあります。

これは、減圧症がそもそも発症する原因が明らかであり、未然に防ぐことが可能な病気である、という考え方が基になっています。
このことから、多くの場合、防ぐことができたはずの減圧症に罹患したのは担当していたPADIメンバーの責任である、ととらえられ、訴訟などの問題に発展する可能性があるということになります。

知っておいていただきたいこと②

これまでに、水深5mでのダイビングで減圧症と診断されたことがあるようです。これは極端な例ですが、冒頭にも申し上げたとおり、ノンストップ・リミットを余裕で守り、安全停止を実施した場合でも、お客様に減圧症が発症してしまったケースの報告を最近受けています。そのため、お客様の立場に立って、より控えめな計画を提案する必要があります。

これらをふまえ、皆様がダイバーを引率する際には、講習、ツアーに限らず以下の内容を実施する必要があります。

対策の確認
  1. まずは、事前にノンストップ・ダイビングの計画を立て、お客様と情報を共有する。ブリーフィングの際にポイントの最大深度、潜水時間を確認する。ここまでは良く行なわれていますが、そのダイビングがノンストップ・リミットである確認はつい忘れがちです。浮上速度と安全停止の確認まで含め、ノンストップ・ダイビングの計画を立ててバディ単位で共有していただくようにしてください。
  2. 各自がダイブ・コンピューターか深度計とダイバーズ・ウォッチを携帯し、モニターする。お客様が自己所有のダイブ・コンピューターをお持ちの場合には、ダイビング中のモニターができ、更にダイブ後にご自身のダイビングのプロフィールをトレースすることもできます。従って、ダイブ・コンピューターを利用することは大きなメリットとなります。今後はお客様がご自身のダイブ・コンピューターをお持ちでない場合に、レンタル器材として用意されるケースも発生するかと思います。最新のトレーニング・ブルティン2016年3号にダイブ・コンピューターをレンタルする際の注意事項が掲載されていますのでご確認下さい。

    深度計とダイバーズ・ウォッチを使用していただく場合は、あらかじめeRDP MLやRDPテーブルで立てたノンストップ・ダイビングの計画を、計画通りに実施します。

    お客様がダイブ・コンピューターや深度計/ダイバーズ・ウォッチを使用しない場合は、たとえダイバー資格をもたれていてもノンストップ・ダイビングの計画を自分で実行できません。
    この場合、PADIメンバーとしては、スクーバ体験プログラムを実施するのと同様の管理体制が必要で、当然リスクも高くなります。

  3. お客様の立場に立って、より控えめな計画を提案する。ダイブ・コンピューターは、eRDP MLやRDPテーブルに比べてより長いノンストップ・リミットを表示しがちです。言い換えればダイブテーブルで引いたノンストップ・リミットはより控えめです。
    にもかかわらず、eRDP MLやRDPテーブルで冷水域やハードなダイビングを計画する場合には、さらに実際の深度より4メートル深く潜るものとして計画を立てるというルールを思い出して下さい。
    このルールは当然ダイブ・コンピューター使用の際にも当てはめて、控えめにダイビングを計画するべきです。
    この、「冷たい」や「ハード」は主観的なものなので、インストラクターではなく、お客様の立場に立って考えるべきです。お客様は皆さんよりもはるかに寒がりで疲れやすいです。

それ以外にも

  • 脱水症状
  • 不健康/肥満
  • 体調不良
  • ケガ
  • 年齢

などの要素も全てお客様の視点で考慮し、必要であればより控えめな計画を立てて、提案してください。
これは、エアー消費が一番多いダイバーに合わせてダイビングを計画するのと同じ考えです。
さらにその上で、お客様にもリスクを事前に自覚していただく必要性があります。
講習時の知識開発だけでなく、現場でも減圧症に対する理解を更に深めていただくように心がけてください。

PADIからのお願い

お客様の身体を守り、PADIメンバーのリスクを減らしたいとPADIは考えています。
メンバーの皆様には上記3項目を実施しなかった場合のリスクを充分お考えいただき、講習やファンダイビングを開催していただきますようお願い致します。

※下に広告が表示されることがありますが、PADIが意図して入れているものではありませんので、アクセスにはご注意ください。


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